古くから株式市場では「セルインメイ」という言葉が有名です。
直訳すると5月に株を売れという意味になります。
セルインメイにはどんな意味があるのか?本当にセルインメイは正しいのかについて解説していきます。
セルインメイ(株は5月に売れ)とは何か?
セルインメイは一種のアノマリーです。
アノマリーとは理論的には説明ができないものの、よく当たる経験則のことです。もちろん根拠がないため、必ずしも現実が経験則と同じように動くとは限りません。
つまり、「セルインメイ」を明確に根拠づけるものはなく、なんとなく過去の値動きから「こういった理由があるのではないか?」といったように議論がされています。
では本当に「セルインメイ」は正しいのでしょうか?
セルインメイの本当の意味
よくセルインメイを勘違いして、5月は株価が下がると思っている人がいます。
しかし、これは大きな間違いで株価は5月に下がるのではなく、5月が天井だから売り逃げしろという意味です。
ちなみにセルインメイには続きがあり、全文は下記の通りです。
“Sell in May and go away, and come on back St. Leger’s Day”
「5月に売却したら、セント・レジャーズ・デイまで戻ってくるな」
セント・レジャーズ・デイとは、9月の第2土曜日のことで、イギリスで大きな競馬レースが行われる日だそうです。
この全文を見ると、5月に下がるから売るというわけではなく、5月は株高になるからしっかり売り逃げして、株式市場が盛り上がらない6月〜8月はスルーをして、9月に買えということが分かりますね。
「セルインメイ」の本当の意味は「株高の5月に売って、9月に株式市場に戻ってこい」
なぜセルインメイが起きるのか?
ではなぜセルインメイが起きるのかというと、それは誰にも分かりません。
しかし、何個か有力な説があるのでご紹介します。
理由1:夏場は市場の株式市場への関心が低下
これは最もオーソドックスで有名な説ですが、そもそも欧米では夏季休暇を1カ月以上と長期に取る傾向があります。
つまり、バカンスなどで株価を毎日チェックする人は少ないと思われますので、市場参加者は少なくなり、株価が上昇しにくいと言われています。
理由2:米国税制
これは夏ではないのですが、年初から株高になりやすいのは米国の税制が大きな理由であると言われています。
つまり、投資家は源泉徴収や予定雨勢をしており、年末に株の損切りなどで所得調整をすることで節税を図ります。
そして、税金の還付は2月〜5月の間で行われ、その資金の一部が株式市場に流入するために、相場が強くなりやすいというのが理由です。
理由3:ヘッジファンドの決算
米国市場において影響力が大きいヘッジファンドに5月と11月の決算が多く、5月に一旦ポジションを利確し、10~11月の決算期末にかけてもう一度買い直していくといった周期があることで有名です。
また、機関投資家も同様の傾向があり、決算期末に現金化する為に大きな売りを出す傾向があるため株価は下がる傾向があるとも言われています。
理由4:ハロウィン効果
これはセルインメイと同様にアノマリーと言われるものです。
「ハロウィン効果」とは、毎年ハロウィンの時期に株価が安くなって、その後、春に向けて株価が上昇する傾向にあるというものです。よって、10月下旬に株を買い、4月下旬に株を売れば、儲かるということになります。
1929年の世界恐慌時のブラックチューズデーは10月29日、1987年のブラックマンデーが10月19日と歴史的ショックがなぜか10月に多いことでも有名です。
過去はセルインメイのアノマリーは効果的だったのか?
上の図は過去5年のS&P500の月足チャートになります。青矢印が5月、赤矢印が10月を示しています。
日付 | 2017年10月 | 2018年5月 | 2018年10月 | 2019年5月 | 2019年10月 | 2020年5月 | 2020年10月 | 2021年5月 | 2021年10月 |
基準価格 | 2,575 | 2,705 | 2,711 | 2,752 | 3,037 | 3,044 | 3,269 | 4,204 | 4,605 |
これを見ると、過去5年では10月に買って5月に売るを繰り返していけば、必ずプラスのリターンであることが分かります。
しかし、米国株式市場は長年右肩上がりの成長を続けてきていたので、一概にプラスのリターンだからセルインメイが正しいとは言えないでしょう。
日経平均の場合はどうなのか?
セルインメイの検証自体は多く行われており、日経平均で検証を行なった場合の検証ももちろん行われています。
過去30年の勝率自体は60%ほどで平均リターンは5.2%程度になっています。
日本の株式市場にセルインメイが当てはまること自体なかなか怪しいものではありますが、完全に機能していないわけではなさそうです。
NYダウの場合はどうなのか?
NYダウの場合は過去30年の勝率は87%となっています。
しかし、米国株式は右肩上がりを続けていることを考えると、やはり勝率自体は当てにならないかもしれません。
本当にセルインメイは有効なのか?
一つ面白い検証があって、日経平均を「10月終値で買って、4月終値で売った場合」と「4月終値で買って、10月終値で買った場合」とで10倍以上のリターンの差が出る結果になりました。
確かに、株を買うタイミングはその後のリターンを大きく左右することは間違いないですし、セルインメイは有効に機能しているといっても過言ではないと思います。
しかし、セルインメイはアノマリーであってそこに根拠はないということを覚えておきましょう。
現在の相場は?
正直いって現在の株価は軒並み下落しており、セルインメイは過度に懸念する必要はないと思います。
セルインメイが有効なのは、4月に株高が続いている時であり、夏にかけて下落する可能性が高い時に起こることが多いです。
現在の相場は既に下落しているため、セルインメイが影響してさらに株価を下げるといったことは考えにくいと思います。
しかし、5月以降株価が下がらないとも言えないのが現状です。
5月にFOMCが控えており、利上げのペースの加速は確実なのに加え、QTの開始、ウクライナ情勢の長期化などを考慮すると、今後も株価の上値は重い展開が続いていくと思います。
セルインメイはあくまでアノマリーとして覚えておく程度にしておき、経済や企業決算などしっかり理解した上でで正確な投資判断をするように心がけましょう。
まとめ
今回は有名なアノマリーである「セルインメイ」について解説していきました。
私はアノマリーに基づいて投資判断はしないですが、有名なアノマリーなどは覚えておくと、今後の投資判断に役に立つと思います。
株式市場の大きな流れを掴むことで、あなたがもっと利益を得ることを願っています。
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